懲戒解雇の直前に退職願を出された! 会社はどう対応すべきか

懲戒解雇の直前に退職願を出された! 会社はどう対応すべきか

「明日、本人に懲戒解雇を言い渡すつもりだったのに、今朝いきなり退職願を持ってきた……」

人事担当者から、こんな相談を受けることがあります。

会社側としては証拠を集め、手続きを整え、万全の準備をしてきたつもりだったのに、土壇場で先手を打たれてしまった。

さて、この退職願、受け取らなければならないのでしょうか。

なぜ、このタイミングで退職願を出すのか

まず、本人の側に立って考えてみましょう。

懲戒解雇は、履歴書への記載義務が生じる可能性があり、退職金が不支給になるケースも多く、再就職に大きな影響を与えます。

一方、自己都合退職であれば、そのような不利益を避けることができます。

つまり、懲戒解雇の動きを察知した社員が「自分から辞めた」という形にするために、先手を打って退職願を提出してくるのです。

これは決して珍しいケースではなく、懲戒手続きが社内で少しでも漏れると、こうした動きが出てきます。

退職願を受理しなければならないのか

結論から言えば、会社は退職願の受理を保留することができます

退職は、労働者からの申し出(退職願)に対して、会社が承諾することで成立します。

退職願を渡されたからといって、その場で受け取る義務はありません。

「預かります」と言って保留し、懲戒処分の手続きを継続することは、法的に認められています。

ただし、注意しなければならない点があります。

退職願ではなく「退職届」の場合は扱いが異なります。

退職届は会社の承諾を必要としない一方的な意思表示であるため、民法上、申し出から2週間が経過すると退職の効力が発生してしまいます。

「退職願」と「退職届」、この2つの違いを現場の管理職にもしっかり周知しておくことが重要です。

懲戒解雇と退職願、どちらを優先するか

仮に退職願を保留して懲戒解雇を進める場合、会社側にはそれなりのリスクも伴います。

懲戒解雇の有効性が後の裁判や労働審判で争われた場合、手続きの不備や処分の重さが問われることになります。

そのため、懲戒解雇にこだわるべきかどうかは、以下の点を冷静に判断する必要があります。

懲戒事由が客観的な証拠によって明確に立証できるかどうか。

次に、過去に本人へ指導・警告を行った記録が残っているかどうか。

そして、懲戒解雇という重い処分が、問題行為の内容と比較して均衡がとれているかどうかです。

やはり解雇のハードルは非常に高いのが現状です。

証拠や記録が不十分な場合は、退職願を受理して円満に終結させるほうが、会社としてのリスクを抑えられるケースもあります。

日頃の備えが、土壇場の判断を左右する

このようなケースで会社が後手に回る最大の原因は、日頃の記録不足です。

問題行為があったとき、その都度、日時・内容・指導の経緯を文書として残しておくこと。

これが、いざというときの会社の武器になります。

口頭での注意しか行っていない、メールや書面による警告がない、という状態では、懲戒解雇の正当性を主張するのは難しくなります。

「まさかここまでやるとは思わなかった」では、手遅れになることがあります。

問題社員の兆候が見えた段階から、記録を積み上げていく習慣を、人事・労務担当者として組織に根付かせてほしいのです。

おわりに

懲戒解雇直前の退職願は、会社にとって想定外の出来事に感じられます。

しかし冷静に考えれば、事前に防げる場面も多くあります。

懲戒手続きの情報管理を徹底すること、退職願と退職届の違いを現場に周知すること、そして日頃から問題行為の記録を積み重ねておくこと。

この3点が、土壇場での判断を支える土台になります。

「先に辞めてやる」と言わせない職場の仕組みづくりこそが、根本的な対策です。