令和8年の春闘、もう結果が出始めています。
2026年春闘の第1次集計(3月23日時点)では、賃上げ率が5.26%という結果が出ました。
令和6年、7年に続いて3年連続の5%超え。
もはや「今年だけの特別対応」ではなく、賃上げは経営の前提条件になってきた、そう感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
「また人件費が上がる……」と頭を抱えたくなる気持ち、よくわかります。
でも今日は、その受け止め方をちょっと変えてみるヒントをお伝えしたいと思います。
賃上げの波を「コスト増の嵐」と見るか?「会社を強くするチャンス」と見るか?
この差が、数年後の会社の姿を大きく変えていくからです。
目次
「賃上げしない選択」のリスクを甘く見ていませんか?
まず正直に言います。
賃上げを「なるべく抑えたい」と考えている会社は、じわじわと競争力を失うリスクがあります。
理由はシンプルです。
優秀な人材は給与水準を見て会社を選ぶからです。
自社の賃上げが業界水準を下回り続けると、既存の社員が「もっと条件の良いところに移ろうか」と考え始める。
採用も思うようにいかなくなる。
そして採用コスト・育成コスト・離職コストがかさんで、結局「人件費の総額」はむしろ増えていく——という皮肉なことが起きます。
賃上げしないことのリスクが、賃上げするコストを上回りつつある。
これが今の時代の現実です。
伸びる会社は「原資を先に作る」という発想を持っている
では、賃上げを前向きに進められる会社は何が違うのか。
一番の差は「賃上げの原資を生み出す仕組みを先に考えているかどうか」です。
売上や利益の構造を変えないまま賃上げだけを求められると、体力を削るだけになってしまいます。
だからこそ、賃上げと同時に「稼ぐ力」を強化することが欠かせません。
具体的には、こんな視点で自社を見直してみてください。
価格転嫁、できていますか?
原材料費も人件費も上がっているのに、取引先への価格転嫁ができていない会社はまだまだ多いです。
「お客様に言いづらい」という気持ちはわかりますが、適正な対価をいただくことは、長く良い仕事を続けるための前提です。
中小企業では取適法(旧下請法)の施行により、労務費の価格転嫁がこれまでより進みやすくなったという側面もあります。
交渉の追い風が吹いている今こそ、動くタイミングです。
「忙しいのに儲からない仕事」を手放せていますか?
限られた人員と時間を、本当に価値を生む仕事に集中させることが、賃上げ原資を作る近道です。
売上が高くても利益率が低い仕事、いつも無理な条件で受けてしまっている取引——棚卸しする勇気が、会社の体力を回復させます。
生産性向上の手を打っていますか?
人手不足が続く中、ITやDXの活用はもはや「やるかやらないか」の話ではなく「いつやるか」の話になっています。
業務の自動化・効率化で生まれた余力を、人への投資に回す。
このサイクルを作れた会社が、次の時代をリードしていきます。
賃上げは「コスト」じゃなく「人への投資」という視点
もう一つ、大切な視点をお伝えします。
賃上げを「払わされるもの」ではなく、「人への投資」として設計できているか?という視点です。
給与が上がると社員の生活が安定します。
生活が安定すると仕事への集中度が上がります。
集中度が上がると生産性が高まります。
業績が改善すると次の賃上げ原資が生まれる——この好循環を意図的に作ることが、経営の本質的な仕事ではないでしょうか。
採用の面でも効果は大きいです。
求人票に書かれた給与水準は、求職者が気にする情報です。
業界水準より高い給与を出せる会社には、それだけ多くの選択肢と優秀な人材が集まってきます。
「人が来ない」「すぐ辞める」という悩みを抱えている会社ほど、賃上げへの投資が最も効果的な解決策になることがあります。
また、大手製造業を中心に高水準の賃上げ回答が相次ぐ中、今後の焦点は中小企業でも賃上げの勢いを持続できるかどうかだと言われています。
大手が賃上げを進める中で中小が据え置きを続けると、人材の流出がさらに加速しかねない。
中小企業の経営者こそ、この問題を「対岸の火事」にしていられない時代です。
「賃上げ疲れ」で止まった会社が、一番危ない
正直なところ、現場からは「賃上げ疲れ」の声も聞こえてきます。
3年連続で対応してきて、もう限界、という気持ちもわかります。
でも、ここで止まってしまうのと一番リスクが高い。
伸びる会社は、賃上げをきっかけに自社のビジネスモデルや働き方を見直し、さらに強くなっています。
そうではない会社は、賃上げを渋々こなしながら、じわじわと競争力を失っていく。
どちらになるかは、今の選択にかかっています。
賃上げをチャンスに変えて、社員も会社も一緒に成長できる——そんな会社が一社でも増えることを願っています。
